これからの教育オーディオロジー研究会を想う

新会長としてご挨拶申し上げます。
聴覚障害教育では聴力を評価し、補聴器や人工内耳を装用できるようにするための指導が必要ですが、装用後も場面や状況に応じて聴覚活用し入手した情報を理解し状況にあった行動がとれるようになるまでの指導も重要です。
本会は、聴覚障害教育にかかわる教員を主として、難聴指導に関係する内容について学びたいという意欲のある教員が集いました。音声音響の基礎に始まり、補聴器やイヤモールドを作成するような技術演習、遊びを通した聞き取り指導等、他では体験できない広い内容の講座が設けられました。大沼直紀前会長(筑波技術大学教授)、愛媛大学の高橋信雄教授と立入哉教授らの思いのこもった講義や演習を受け、夜を徹して熱心に学んだことを懐かしく思っています。
当時の補聴器は箱形でアナログでしたが、現在では耳掛型のデジタル補聴器が主流です。補聴器では十分な効果が得られない子どもには人工内耳が適応になりました。補聴器だけでなく人工内耳についても理解が必要になりました。
乳児の聴覚評価の確立により難聴診断が早期に行われるようになり,対象が乳児期の親子から青年期へと長期にわたるようになりました。発達に応じた聴覚評価と他覚的な検査についての理解も必要になりました。
発達障害を含む他の障害と聴覚障害を併せ持つ子どもたちへの指導が求められるようになってきました。難聴を持つ重複障害についての指導技術が求められます。聴覚障害は、高度重度の難聴だけでなく軽度難聴や一側性の難聴、音は聞こえるけれどもことばが聞こえにくいLid/APDも知られるようになってきました。
聴覚障害に関わる評価や指導は多様化し、専門性が高まりました。学校教育では専門性の向上のために言語聴覚士を含む専門家の活用が進んでいます。本会も教員だけでなく、言語聴覚士や補聴機器関係者など会員の職域を広げ、協働して難聴児の指導にあたりたいと考えます。
難聴教育に携わる教員や関係者の学びのニーズも多様化していると思われます。会員のニーズを把握しながら次年度以降の研修会を長期的な視点で企画していきたいと思います。
会員の皆様には、どのような学びが必要なのか声を上げていただくと共に、ご協力のほどよろしくお願いいたします。
日本教育オーディオロジー研究会 会長
平島ユイ子(国際医療福祉大学言語聴覚学科)